CAPとはChild Assault Prevention(子どもへの暴力防止)の頭文字でをとったもので、
子どもたちがいじめ、誘拐、虐待、性暴力から
自分の心とからだを守るための人権教育プログラムです。
CAPプログラムは従来の「~してはいけません」式の危険防止策ではなく子どもたちに何ができるかを教えます。
子どもたちはロールプレイ(役割劇)や話し合いを通して
・自分が大切な存在であり「安心」「自信」「自由」の権利があること。
・自分の権利を守るための方法
・友だち同志で助け合う方法
・信頼できる大人に相談する方法
を学びます。
子どもは無力な弱い存在ではなく、素晴らしい力と知恵を持っています。
その力に働きかけ「自分の大切さ」を教えます。
1978年 米国オハイオ州コロンバス市の「レイプ支援センター」でCAPプロ
グラムが開発され実施される。
1985年 森田ゆりさんによって日本にCAPプログラムが紹介される。
1995年 CAPプログラムを実践する専門家を養成する講座(CAPスペシャ
リスト養成講座)が開催される。
1998年 CAPセンター・JAPANが設立される。
2001年 特定非営利活動法人(NPO法人)CAPセンター・JAPANとなる。
2009年 J-CAPTA発足。
*日本に2つ目のCAPトレーニングセンターが認可され、日本の北部エリアを
J-CAPTA,南部エリアをCAPセンターJAPANが担当することにな
った。
(1) エンパワメント(Empowerment)
エンパワメントとは、一人ひとりが誰でも
潜在的にもっている力や個性を再び引き出し
取り戻すこと、そしてその人と人との関係性をいいます
(2) 人権意識
・権利とは、「生きていくためになくてはならない大切なもの」
・特別に大切な3つの権利 「安心」 「自信」 「自由」
誰もが生まれながらに持っている権利です=基本的人権
暴力を受けるとこの3つの権利が奪われることになります。
・人権意識を育てる 「自分を大切にする気持ち」
自分の人間としての尊厳を大切にできてはじめて、他人も大切にす
・権利を奪われたときの対処の仕方
「NO!」 いやと言ってもいいよ。一人で言えないときは友達と一緒に言おう。
「GO!」 逃げていいよ。その場を離れていいよ。
「TELL!」 信頼できる人に相談しよう。
(3) コミュニュティー 学校・家庭・地域をつなぐ
子どもへの暴力の問題解決には、地域・学校・家庭の協力が必要です。学校に地域の大人(CAP)がやってきて
子どものプログラムを提供することによって、子どもたちは子どもの安全のために真剣に取り組んでいる大人たちがいること、
子どもの話に耳を傾ける大人がいることを理解し、安心します。また、子どもだけでなく、教師、保護者がCAPワークショップを受け
ることにより、 CAPの提供した言葉や概念を使って、日常の中で暴力について有効に子どもと話し合うことができます
CAPプログラムは「子どもワークショップ」と「大人ワークショップ」があります。
CAPプログラムは本来子ども向けに作られましたが、保護者の方や教職員の方たちにCAPの考え方を理解して頂くために「大人ワークショップ」を実施しています。
CAPプログラムはワークショップ(参加体験型学習)で実施しています。参加者が考え意見を述べロールプレイに参加していきます。
子ども向けワークショップは暴力というテーマを、子どもたちが恐れを抱かずに楽しみながら参加できるように工夫されています。
子どもへの暴力に対して何ができるかを具体的にロールプレイや話し合いをしながら一緒に考えていきます。子どもワークショップは基
本的に向けワークショップには「CAP小学生プログラム」「CAP就学前プログラム」「中学生暴力防止プログラム」があります。
(1)CAP小学生向けプログラム
対象:小学生
時間:60分+トークタイム30分
人数:クラス単位(40人以下)
CAP小学生プログラム次のような流れで行われます。
約60分間かかりますが、小学校の場合はトークタイム(復習・質問の時間)を含めて授業時間45分間を2コマとっていただきたいです。
できるだけ子どもたちに自分の気持ち、意見を言ってもらいながら進行していくのでクラス単位で実施するのが原則です。
子どもたちには被害者を助ける友人役でロールプレイに参加してもらいます。
ロールプレイに参加することで自分のこととして考えることができ、また被害者を助けることができたという成功体験を得ることができます。
学年に応じて言葉遣いや劇の雰囲気を変えながらも、どの場面も子どもたちが怖くならないように楽しく感じられるように配慮して進めていきます。
いじめ の場面 ・「いやだ」「やめて」と言ってもいいんだよ。
・ 誰かに相談しよう
「 NO GO TELL 」
誘拐の場面 「知らない人につれていかれそうになったら」
・名前を教えない
・腕2本離れる
・こわいと思ったら逃げる
性暴力 の場面 「知っている人でもいやなさわられ方をしたら」
・いやと言っても良いんだよ
・逃げてよいのだよ
・誰かに話そう
先生ロールプレイ 信頼できる大人に相談する トークタイム
エンパワメントぐんまで実施したCAPを体験した小学生の感想
・キャップの中で一番楽しかったのは劇です。僕も参加しました。
・いろいろなことがわかって安心しました。あととっても楽しい勉強になったので嬉しかったです。
・悪い人におそわれたときにどうしたらいいかわかりました。すごく楽しかったです。
・キャップの人はいろいろなことを教えてくれました。前に出て劇ができたのが楽しかったです。ありがとうございました。
・ぼくはまえは変な人にあったら大きな声をだすことしか知らなかったけど、キャップをしてほかのこともよくわかりました。
・お話をきいていると面白そうで役にたちそうでした。劇も突然だからびっくりしたけど役に立ちそうでした。
エンパワメントぐんまで実施したCAPを体験した担任の先生のコメント
・CAPの指導を受けて「嫌なことに対していやだとはっきり言うこと、いやならば逃げても良いこと、大人にあったことをありのままに語る事」が正しいことなのだ、ということに確信を得た子どもが多かったように思う。
・同じ事を、トレーニングをしていない者がやっても今回のような効果は期待できないであろう。「プロ」としての知識と意欲が子どもたちの心に響く決定的な要因であると感じた。
・こうした機会を小学生の間に与えられることは非常に有意義であると思う。今後もまた継続してCAPの指導を教師・子どもたちに受けさせるべきだと感じた。
(2)CAP就学前プログラム
対象:幼稚園児・保育園児
時間:1日20分を3日間に分けて行う
人数:20人以下
内容
1日目 子どもの権利
安心・自信・自由
おもちゃの取り合いのロールプレイ
イヤと言う練習
2日目 知らない人に会ってこわくなった時の劇
(子どもと等身大の人形劇で行う)
特別な声の練習
つかまえられた時の逃げ方
大人の人に話す
3日目 知っている人にいやな触られ方をした時
子どもができること
先生に話す
(3)中学生暴力防止プログラム
時間:100分×2日
人数:40人以下(クラス単位)
1日目 暴力とは何か 心とからだが傷つくこと
人権について 安心・自信・自由
知らない人からの性暴力
セルフディフェンス(安全に逃げる方法)
いじめ(友だち同志のお金を取り上げられる場面)
あきらめずに自分ができることを見つける
傍観者にならない(友だちと助け合う)
2日目 親からの体罰
体罰についてどう思うか
男らしさ・女らしさ
ジェンダーについて
自分の意見を表明する(他の人の意見に左右されない)
知らない人からの性暴力
友だち同志で気持ちを話す・聴く(ピアサポートの練
エンパワメントぐんまで実施した中学生暴力防止プログラムを体験した中学生の感想
・僕たちは、いじめなんて関係ないし、そんなもの僕たちにはないと思っていました。
でも今日の劇を見て、発言するときに友達のことを笑ってしまったりしたことがあるのを思い出して、
それもいじめになっていくのかなと考えさせられました。
・一番はじめに思ったことは、CAPの人たちは人の心を分かってくれて、信頼できる存在だと思った
・自分を振り返って、自分でなにげなく言っている悪口は人を傷つけていることが多いので気をつけたいです。
・CAPというのはすごい。自分は一人しかいないんだ。自分の意見はしっかり言おうと思った。自分の心とからだ、他人の心とからだ
を大切にしていこうと思いました。
・人間は、一人ひとりが権利を持っている。その権利は誰かがそれを奪うことができる。けど、そんなことは絶対にしたくないと思っ
た。
・「自分の気持ちは自分のもの」「自分は世界に一人しかいない」という2つの言葉が頭から離れません。
今まで私はあまり自分の気持ちや意見を表現したり、発言したりするのが得意ではなく、他人の顔色をうかがってばかりでした。反対
に、他人の意見や気持ちを聞きいれることも苦手でした。だからHさんやSさんが教えてくださったこと、また、自分で感じ、考えたこ
とを忘れずに、これからの生活に生かしていきたいです。
トークタイムは個別に話をしたい子どもがCAPスペシャリストと話をする時間です。
トークタイムは子どもワークショップの復習と練習を個別にします。その中で子どもの話をしっかり聴くことと子どもの問題解決を
助けることをしています。
子どもが深刻ないじめや虐待を訴えてくることもあります。その場合は子どもの承諾を得て問題解決に向けて先生方につなぎます。
CAPのロールプレイに参加してCAPスペシャリストへの信頼が芽生えて、子どもは誰にも話さなかったことを話をしてくれるのです。
子ども向けワークショップを実施する前に、保護者と教職員向けにワークショップを実施することにしています。なぜなら、子どもたちがエンパワーしても周囲の大人がそれを支えなければ、大人の関わり方は逆風になってしまうから。
時間:120分
人数:制限なし
内容:権利について
模擬子どもワークショップ
エンパワメントについて
子どもの話をどう聴くか
ワークショップ参加者 保護者の声
★安心・自信・自由を与えられる関わり方、子ども達の話を聴くことの大切さを改めて認識したように思いました。
★初めて参加させていただきました。不思議な緊張感がありました。子どもに話すことがたくさんでき、また、私自身も「あ、そうか」
と思うことがあり、大変よかったと思います。是非もう一度機会があればと思います。
★自分が子どもの頃に戻り、その時の気持ちで考えるという事、新鮮でした。すぐに戻れるというのも驚きでした。友達の顔が浮かんで
きたり、少しなつかしく思ったりして、自分が幸せな子ども時代を過ごしてこられたのは、友達、先生、親の環境がよかったのだと思い
ました。(嫌なことは忘れてしまっただけなのでしょうか。)
★最初は何をどうするのだろうという気持ちでしたが、話が進むにつれ、どんどん話の中に入っていく自分に気がつきました。子育てに
悩んでいる時期だけに、一つでも実践できたらと思います。